バベシア病の病態と感染経路

バベシア病はバベシアという原虫が赤血液内へ入り込んで感染する病気です。
赤血球の酸素運搬作用を弱めるので、バベシアの感染が広がると各臓器や細胞が酸欠に陥ります。
肺炎を患ったり高山病でもないのに血中酸素飽和度が低くなる現象はバベシア感染の方にしばしば見られます。

病態はマラニアに類似しており、症状も共通しています。
マラリアはマラリア原虫を運ぶ蚊に刺されて赤血球内で原虫が生育繁殖する病気です。発熱、風邪症状、筋肉痛、関節痛、リンパ節腫脹、発汗、寝汗、悪寒、咳、息苦しさ、発疹、頭痛などです。
熱帯に多い病気ですので病名が知られている割には縁がない方が多いと思います。

一方、バベシアはダニが媒介しアジア~欧米など広いエリアにわたる都市部や山間部の病気です。
バベシアの感染はダニに左右されるので物流と人流とライフスタイルの変容によって増えています。
ガーデニング、キャンプ、登山、ハイキング、ボート、カヌーなどの趣味を通じたダニとの接触や室内のカビ繁殖によっても影響を受けます。また、輸血由来の感染、性感染、母子感染もあります。

バベシア病とライム病の混合感染

バベシア病はライム病と混合感染することが多い感染症です。ダニが媒介しヒトに刺咬しバベシアに感染させます。

ライム病と症状が似ている点が多く、発熱、疲労、知覚異常、認知機能低下、関節痛、周期的な皮膚のかゆみ、黄疸、消化器症状、光線過敏症、リンパ節腫脹などを伴うことがあります。
うつ症状、不安、情緒不安などを伴うこともあります。頭痛、不眠などの神経症状が顕著となることもあります。

息苦しさや咳など呼吸器症状をしばしば認めるので、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、肺気腫、肺炎、喘息と思われることもあります。
ライム病の関連病のなかでも特に神経症状が起こりやすいです。

バベシアの感染があると、他の混合感染やSIBO腸内環境の腐敗が治りにくなります。便秘型のSIBOも多いです。

バベシア病の診断と治療の流れ

バベシア病の診断は当院では信頼性の高いPCR検査を利用しています。
血液塗抹標本は7割弱が偽陰性になるといわれており実用的ではありません。

治療のながれは胃腸の機能障害に配慮し、消化管の免疫を司るGALT(腸管関連リンパ組織)を担保します。
次に抗菌治療をします。病原体の毒素や老廃物であるバイオトキシンやニューロトキシンを解毒します。
血液脳関門のダメージがみられる場合、脳の抗炎症対策も行います。
たとえばアーテスネート(artesunate)剤はヘモグロビンをターゲットにした、バベシアに効果的な治療薬です。アジスロマイシンなどの抗生物質もよいです。

見つかりにくいバベシア病

ライム病の12%~66%がバベシア病を合併しているという統計データがあります。ライム病は米国で年間30万人罹患するので、バベシアも珍しい病気ではありません。
症状が多岐にわたり、診断に至らないことが多く医師がバベシアを診断できないことがあります。高熱で救急外来を訪ねた者のうち、不明熱とされたケースにバベシアが隠れている可能性が高いと指摘する専門家もいます。

参考文献

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