カビの毒、マイコトキシン

マイコトキシンとは、カビが産生する有害な老廃物の総称です。カビには多くの種類の菌があり、それぞれのカビの菌が産生するマイコトキシンにもたくさん種類があります。現在までに知られているマイコトキシンは400種類にもなります。マイコトキシンにはたとえば、産業廃棄物や有機化合物に似た構造のものや、肝臓がんなどの発ガン性があったり、エストロゲンというホルモンに似た構造のもの(内分泌撹乱性)や、リーキーガットや腸内腐敗を起こしたり、バイオウェポン(生物兵器)になったり、シックハウスの原因になる毒性の強いものもあります。

2019年昨年の長い梅雨と夏はかなりの高湿度が続き、その後残暑に入っても大型台風と洪水と異常気象が続きました。6月からの異常気象が残した負の遺産ともいえる、高湿度と閉鎖空間ではカビが繁殖します。

日本の風土はもともと高温多湿でカビが繁殖しやすい条件がそろっています。

病気のトレンドは時代とともに変わりますが、カビが関与する病気が近年浮上してしてきました。原因はいくつかの挙げられます。外部環境の原因としては、主に住環境、気候変動、高温多湿などにより、室内にカビが発生し、そのカビを吸い込みカビに感染する可能性が増えたことです。

また、からだ側の原因としては、食生活の変化による腸の健康が衰えていることがまず第一に挙げられます。腸の機能が弱いということは、腸管のバリア機能が弱いということです。様々な感染源がからだにはいりやすくなります。

腸の健康を損ねる因子はほかにも、加工食品や糖質中心の食生活、抗生物質の乱用や、GMO食品の増加などがあります。現代特有のさまざまな要因が重なり、腸内のエコバランス(腸内細菌叢)のバランスが崩れていることが多いため、その隙をついてカビがいったん体内に入るとからだを守るべき善玉菌のチカラ不足で、カビの繁殖を許してしまうのです。

抗生物質を繰り返し飲むことに抵抗を感じる方が多い一方、GMO食品(genetic modified organism,遺伝子組換え作物) についてはなんとなく体に悪そう、というくらいの認識しかありません。実はGMO食品(遺伝子組み換え作物)を食べると、抗生物質を摂っているようなことになります。GMO食品は虫や雑草が増えないようにするため、大量の抗生剤を使っても耐えられるだけの遺伝子組み換え操作をした種子から産まれた農作物です。農作物内にGMO対応のグリフォサートという薬剤が残留します。GMO食品を良く食べる人の尿からはグリフォサートが検出されますし、GMOの飼料を食べた家畜の肉からもグリフォサートが検出されます。GMO食品に関与するということは食事のたびに抗生物質を少量ずつ飲み込んでいるということです。そもそもグリフォサートのメカニズムは虫の腸管を破裂させて死にいたらしめるものですので、人間の腸管に有益なはずがないですね。

GMO食品の台頭と肉食のトレンドも腸内環境のアンバランスやカビ感染を助長しています。

「食品からも見つかるマイコトキシン例; ペニシリウム、オクラトキシン、アスペルギルスなど」

近年の建物は、日本の気候に適さない化学物質まみれで、プラモデルのように組み立てられています。ライフスタイルの変化や治安のために昼間窓を開放しにくくなっています。大気汚染のために都市部の建物内も汚れています。粉塵やほこり内にカビは繁殖しやすいです。

さて、このマイコトキシンの特徴は有害なことに加え、もう一点あります。それは、揮発性でない、ということです。VOCという、ホルムアルデヒド、トルエンやキシレン、ベンゼンなどの有害な化学物質は揮発性有機化合物です。たばこの臭いやペンキの臭いなど時間が経てば揮発してガスになり減ります。しかし、マイコトキシンは自然消滅しません。それどころか、条件が揃えばどんどん育ち繁殖します。条件とは、建物や布などの育つ培地(土壌)、高湿度、カビのえさ、紫外線が届かない、空気の流れがない、などです。

いったん体内に吸い込んでしまったカビの胞子やマイコトキシンは、長期間体内に残り、繁殖もします。マイコトキシンのように、生命体由来で体内で毒の発生が起こり体調不良の一端となるものを総称してバイオトキシン (biotoxin)といいます。カビ感染があり、カンジダ菌大量感染やマイコトキシンの大量繁殖があると、慢性化し、徐々に免疫低下が起こります。その弱ったからだに他の病原体も感染しやすくなります。弱った体をねらって感染する病原体はカビだけではありません。健常者には感染しなくても、かび感染などの理由で弱った体に感染するもとを日和見感染といいます。カンジダやマイコトキシンなどかびに縁がある方は、この日和見感染という、かびの陰にかくれた別の病原体も体内に抱えていることがあります。 この状態は混合感染 (co-infection)といいます。

2020年以降、慢性の体調不良はバイオトキシンが関与する傾向がより顕著になると思います。

カビ(カンジダ菌やマイコトキシン)と混合感染(co-infection)しやすい病原体

ボレリア菌(ライム病)、バルトネラ、クラミジア、マイコプラズマ、バベシア、リケッチア、野ウサギ病(ツラレミア)、トキソプラズマ、ワイル病、その他寄生虫、EBウイルス、HHV-6、HPV(ヒトパピローマウイルス)、ヘルペス、クラドスポリウム、スタキボツリス感染など。また、腸内細菌叢のアンバランス(dysbiosis)、腸内腐敗やSIBO(小腸細菌異常増殖症)、SIFO (小腸真菌異常増殖症)。

カビがきっかけとなる体調不良は、気候の温暖化や、気候変動による台風、ハリケーン、洪水、集中豪雨などに影響を受けて、今後増えるでしょう。しかし、多くのケースで原因不明とされ、体調不良に対して適切な処置がとられないケースが今まで以上に増えることでしょう。カビやマイコトキシンの対策は、発生源を見つけて、まず元を締めることです。マイコトキシンのせいで起こった情緒不安や偏頭痛に対して精神安定剤や頭痛薬を処方することが本質的に健康を取り戻す手段とはいえないでしょう。カビの発生源(たとえば、家や部屋や体内)の対策を講じない、気づかずに放置してしまった場合、どうなるでしょうか。上記のマイコトキシンについての記述からも明らかですね。マイコトキシンは自然に消滅することはないため、時間の経過*とともにからだの免疫力がむしばまれ、他の感染源にも見舞われることになる、混合感染に発展するかもしれません。また、マイコトキシン過剰蓄積の方はほぼ全症例、リーキーガット、腸内腐敗、SIFO (小腸真菌異常増殖症、small intestine fungus overgrowth) などといった、腸内環境への悪影響を認めることが知られています。**腸のバリアが弱まり、外部環境からの有害物質、たとえば残留農薬や添加物や有害縫う金属などが体内に侵入しやすくなります。

*時間の経過: 建物、環境由来のカビに暴露してから平均2年経過してから明らかな慢性の体調不良を自覚します。初期はからだの代償機能がはたらき、体調の変化に気づきにくいが、一定の期間カビに暴露し続けたのちに、慢性の炎症性疾患を発症するという経過が典型的です。

** ‘’Micotoxin: Its impact on Gut Health and Microbiota’’ Winne-puipui Liew et.al., Cellular and infection Microbiology vol.8 Aticle60/26Feb2018

まとめ:建物内のカビの発生源やカビが発生する理由

  • 高温多湿(室温26度と湿度60%以上)
  • 立地条件(河川、海、盆地近く)
  • 家具(ベッドマットレス、寝具、ソファ、カーテンなど)
  • 北向き
  • 窓を閉めっぱなし、暗い部屋、長期の留守宅
  • 室内干し
  • 水漏れ、床下浸水、雨漏りそのほか水害を被った家
  • 内装工事後のほこり、粉塵
  • 結露
  • 半地下や1階の部屋
  • 加湿器使用
  • 高湿度のクローゼット
  • 玄関周り
  • 水回り、シャワーカーテン、排水溝、タイル目地など
  • 洗濯機
  • エアコン

マイコトキシンは以下のような慢性疾患のきっかけになったり、全身の問題に関与します。

  • リーキーガット(腸管透過性亢進、腸管漏洩症候群)
  • SIBO (小腸細菌異常増殖症)
  • IBS(過敏性腸症候群)
  • CS(化学物質過敏症)
  • CFS(慢性疲労症候群)
  • MCAS(マスト細胞活性症候群)
  • ES(電磁波過敏症)
  • CIRS(慢性炎症反応症候群)
  • 性ホルモン系の病気(不妊、乳腺症、乳がん、子宮筋腫、PCOS、卵巣のう腫、子宮内膜症、前立腺の病気、早熟など)
  • 慢性の上気道疾患、肺炎、慢性の副鼻腔炎、鼻炎
  • 日和見感染や慢性感染(カンジダ、寄生虫、ライム病、マイコプラズマなど)
  • もの忘れ、認知症
  • 情緒不安
  • うつ症状
  • 慢性頭痛
  • 不眠
  • 遅延型食事アレルギー
  • 関節痛、線維筋痛症
  • 自己免疫疾患
  • 肝機能障害(例:原因不明の肝臓の酵素の値が上昇 GOT高値)
  • 腎機能障害 (例:原因不明、腎機能を示すクレアチニンの値が軽度上昇)

関連記事

  1. 住居内、一面のカビが猛威を振るう記事

  2. バイオフィルム

    感染とバイオフィルムのはなし

  3. siboの腹部の写真

    SIBO 小腸細菌異常増殖症とは…??

類似名称のクリニックにご注意ください。
PAGE TOP